The Arla Institute(アルラ研究所)

アルラ研究所のロゴ
施設名:The Arla Institute(アルラ研究所)    http://www.arlainst.fi/english.htm
訪問日 2003年9月24日(水曜日)
対応者 Jouni Onnela ,Esko Runskanen,Sari Torniainen 
施設の概要
 Arla Institute はフィンランド唯一の視覚障害者研究機関であり、1892年に設立された。当時は女性だけの施設であり1906年から男性の施設もできた。1970年に国の機関となり、フィンランド教育省教育委員会の下部機関である。 現在は研究所と視覚障害者向けの職業訓練所として、社会参加でき、一人で生活できるような住環境のトレーニング施設をそなえている。
アルラ研究所への案内看板の写真
アルラ敷地内の案内看板
施設内案内地図の写真
施設案内図
研修内容、質疑応答内容
●障害者比率について
Q.施設内の学生およびスタッフの障害者比率(構成)を教えてください。
A.学生数は210名で、その内訳は、80%が視覚障害者(70%が弱視、10%が全盲)で、聴覚障害者や精神障害者が15%、健常者も5%いる。健常者もいることーいろいろな生徒がいることが大切でこれがここの特徴です。年齢構成は16歳~56歳までである。また、障害者のうち70%の学生は複数の障害を持っています。 スタッフは100名で、うち5~6名が障害者です。(障害者が教員の資格をとるのは、健常者とまったく同じ扱いなので、非常に難しい現状がある。)

●教育・訓練の体系について
まず、リハビリテーションと基礎コースがあり、さらに職業訓練コースがあります。リハビリテーションは職業訓練コースに行っても続けることができます。また、複数障害者に対するトレーニングコースがありますし、さらなるトレーニングコースとして、短期コースと成人教育コースが用意されています。

●基礎コースのカリキュラム内容について
3年間で120単位をとります。一般科目として言語や数学20単位、就職科目70単位、フリー科目10単位、OJT科目20単位となっています。すでに教育が済んでいる人は、基礎コースを飛ばしてうけることも可能です。複数障害を持つ場合3年はかかります。

●具体的な教育内容について
A.ここでは基礎コース修了後、主に視覚障害者が独りで社会生活ができること、仕事ができることを目標にさまざまなトレーニングを行っています。
(右:視覚障害者の人が包丁とオーブンを使って料理の実習をしているところ)
料理の授業風景 トマトを切っている少女の写真
キッチンの授業風景
 具体的には一般教育(語学も含む)、点字についての勉強・ITデバイス(コンピュータ・拡大機・音声リーダー)の使用方法・個人それぞれに合った社会生活の指導・職業訓練などです。点字については特に中途失明者も含みます。一般教育は日本では専門学校及び大学にあたる授業のほか、母国語や第二外国語である英語などの教育を行っています。  ITデバイスはそれらを使うだけでなく、生徒が希望すればそれぞれに合った勉強方法Microsoft Office・プログラミング<Visual Basic,C,Linux Serverの設定>も行います。
(右:日常生活が一人でできるようにトレーニングをする部屋)

一人での生活トレニングルーム
 また、その他の職業訓練では古い家具の修理や籐を使った小物や家具の製作・ピアノの調律・板金などの鉄工修理も勉強できます。社会生活に関しては入学の際に個人それぞれの部屋が提供され、実際の生活機器(冷蔵庫・TV・洗濯機)などを部屋に配置し、それらを使いこなすことができるよう指導します。

●フィンランドにおける障害者の雇用について
 フィンランドでは健常者も障害者も同等に働くこと、雇用者は同等に雇うことが基本的なルールとなっています。健常者が障害者を蔑視して配慮したりすることは全くありません。また雇用環境は必ず整備しなければいけませんし、企業が環境の整備や積極的な雇用をしたからといって「当社は健常者と障害者のバリアフリーを目指しています。」などという企業イメージの向上などという考えも全くありません。社会及び国が「あたりまえ」という意識をもっています。

●盲人位置情報の研究について
Q.我々は当初Arlaでは研究機関として認識していたが、ヘルシンキ工科大学との研究の中で、盲人の位置情報をつかむ実験はどの程度でしょうか?またそれらが利用できるようになっているのか知りたいのですが。
A.研究機関としてはおっしゃられるようにパイロットモデルとして行っているものがあります。事前学習された通りGPS+ロケーションシステムを使用したNOPPAというものです。これらを組み合わせることにより、バスを利用するときの時間や行き先などの情報入手や、現在の自分の位置確認を行うことができます。 フィンランドではあくまでも自立を目標としているため健常者からの支援は基本的には考えないことでこの研究も進めています。

A.話し言葉でのサービスや音声リーダーでのサービスなど両方行われています。パーム(PDA)を利用しての実験もしています。実際に行う時は、PC機能を持っている携帯でもできるようにしたいです。

● IT教育の方針
 エスコーさんという方が指導しています。1970年から、この教育の提供をしていますが、途中で教育の方向が変わり、技術的サポータを養成するようになっています。ミクロトキヘンキロさんという方が、コンピュータ関係の管理責任者となっています。ここでは、コンピュータに関する基本的な資格を取ることができます。義務教育が終わってから入学が可能です。
●IT教育の内容 
 現在は、利用技術を中心に勉強しています。 フィンランド語の勉強や書類を書いたり、情報を取り扱う勉強もしたりします。自分の口で発表もします。 企業とは何かという勉強もあり、事業者としての勉強もしているが、事業者になる学生は少なく、会社にやとわれるのが、ほとんどです。 英語(外国語)の勉強はIT分野にとって大切な言語といえます。国際会社につとめる場合は英語が必須です。コンピュータの利用技術も勉強します。
シェルタ内にあるコンピュータ教室の写真
シェルタ内にあるコンピュータ教室
 いろいろなマシンだけでなく、スクリーンリーダーを用いるのが特徴です。それ以外にもPCのインターネットに関しての勉強をしています。また、いろいろなOSの導入やソフトウェアの導入に関しても勉強しています。 その次の段階でプログラミングやウェブページの作り方を学ぶ生徒もいます。しかしながら、これらを学ぶのは難しいといえます。ネット上のコンテンツの仕事も指導しています。自分だけでなく、教え方や伝え方も勉強しています。 ネット上のサービスは、技術的なことから始めます。いろいろな機械を使いながらプロトコルの勉強もしています。ソフトウェアはウインドウズ2000,2003,Linux,Novelネットワークを利用しています。3つのシステムを使って、小さなイントラネットをつくる勉強もしています。

●資格に関して
 アルラで提供しているベーシックな資格は国家資格として通用することを指導しています。 あとの勉強は、自分でする必要があります。就職に関して、実際のオンザジョブトレーニング(現地での勉強)が半年くらいは必要であると考えています。半年程度の研修後就職します。

● 研究機関における活動について
 現在、IT関係のほかに、特に複数障害者支援の研究が進んでいます。また、2003年始め~2004年春までのプロジェクトとして、「ターサネットプロジェクト」が動いており、これは、障害者のE-ラーニングシステムのフィンランド版の開発です。そのほかに、Webサイトのアクセシビリティなどの研究をしています。

その他質疑応答
●IT
Q:全員が学べるのでしょうか?
A:勉強できる人だけ、就職できる可能性が高い人には開かれるといえるでしょう。

●就職
Q:フィンランドでは障害者を雇わないといけないというルールはありますか?
A:就職に関しての決まりはありません。最初は国からサポートされている給料の補助は半年です。
   目が不自由な人の職場へのルートも確保しなければなりません。
   職場での指導が必要であるといえます。年金協会からの補助もあります。
 
●ITコースは人気があるのではないでしょうか?
Q:ここで学ぶことができない学生はどこで学ぶのでしょう
A:人気があるかどうかという事も関係があるが入学する学生は厳しく検査されます。 3年間学ぶことができるかどうか、その後働くことができるかどうかチェックします。しかしながら当てはまらない場合には、他の分野を勧める場合もあります。
検査項目は以下のとおりです。
  ・先生達との話し合い・心理学・モチベーション・健康・読解力・理解しているか
  ・フィンランド語の能力や英語能力・数学試験
  ・団体で働けるかどうか(協調できるかどうか)
   資格を取るだけの短期間コースの場合には特にありません。

●Q:退学者は?
 A:退学する人も中にはいます。割合は普通の学校と同じくらいです。勉強をやめるのは、日常生活もやめるという事になってしまうのです。ここでは日常生活を行うための支援もしています。
 生徒の半分はここの寮に住んでいます。ここに引っ越すまでは自分の家に住んでいました。ここに住むことによる責任を負うこともありますが、自由になった事による可能性はあるといえるでしょう。寮の門限はありません。自分で決めてやることを期待しています。しかしながら、一応11時には戻らないといけないという規則は作ってあります。

●卒業生へのサポートは・・・
 毎年増えてくる。そこまでの支援はこちらからはできないのが現状です。
Q:こちらへ連絡がとどいたらサポートをする?
A:追加の支援は特にしないそうです。

●Eメールアドレス
Q:ここでのEメールアドレスは、いつまで使えますか
A:卒業して1,2ヶ月のみです。名前と名字@サーバー名をあてています。

職業訓練施設としてのARLA
〇ピアノ調律の指導
 ARLAでは職業訓練としてピアノの調律技術の指導を行っています。実際にピアノの修理・調律を行い、障害者でも健常者でも入学できます。
 この調律実習室には横にいくつもの防音室がもうけられています。最初の学習は絶対音階を身体に覚えるまでこの部屋で音を把握する実習ができ、非常に充実した設備が完備されていました。
ピアノ教室の写真
ピアノ教室の風景
〇籐製品及び機織の製作実習・職業訓練
 籐や織機を扱っていたのは、優秀な職業訓練コースの学生たちで籐製品の製作から修理までを勉強しています。実際に製品の販売も行います。製品にはフィンランドで作られたこと、障害者がハンドメイドで作ったことがタグに書かれています。製品は視覚障害者が作ったから格安ということはなく、非常に丁寧な仕事をしています。



〇その他
 板金や鉄工所の施設もありました。これは健常者でもかなり難しい作業なのですが、障害を持った方でも関係なく、作業を行っていました。
なにしろ視覚障害者でも職業の選択の幅がたくさんあることに驚きました。


籐の担当の先生の写真
籐の製品作り担当の先生
織物をしている生徒の写真
織物を習っている生徒
総括:
 当初日本でのARLAの認識は「視覚障害者のための研究機関」だと思っていましたが、実際は障害者の訓練施設として様々な訓練を行っており、入学対象は視覚障害者だけではなく肢体不自由の方、また健常者も同時に勉強し、職業訓練を行っている施設でした。「個人主義」という話の通りここの施設は本当に素晴らしいものでした。周りの自然も本当に美しいものでした。  他の施設の感想でも述べてありましたが、やはり他の機関との連携はしっかりしており、NKLや各地域の盲学校とも密接につながっていると感じました。
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