研修最後の日: 9月26日(金)

 研修がある日としては最後となった。明日はもう帰国の途に就かねばならない。 朝食はいつもと同じで、すでに我が家にいる感覚で慣れきっている。 食事内容も同じであるから、新しいものにチャレンジしようにも、もう殆ど食べつくしてしまっている。 本日の特別メニューでもないかと見渡すが・・・・ない。 まぁ、それは致し方ないことであるが、研修は本日も充実したものとなっている。 今日の予定では、訪問するところが4箇所もある事になっているのだ。
メインは二回目の訪問となるNKLであり、3日前にいけなかった部署と、NKLが持っている郊外施設を訪問する予定である。 一回目に行った時に、NKLでの研修が二日間も予定されている事に驚いたわけだが、その一回目の視察研修もすごく充実していたし、勉強にもなったから、これ以上なにがあるんだろうと自然に期待も膨らんでいるのである。(でもほんの少しですけど、二回も行かなくても、という気持ちはありましたです。はい。すいません。)
 8時半に、例によってホテルロビーでヒルボ氏と待ち合わせ、メンバーが揃ったところで出発となった。 天候が曇り気味でもう一つだが、昨日の雨からみれば随分といい。 NKLは2回目ということもあり、行く道程に迷いはなかった。 第一回目と同じようにトラムに乗っての訪問である。
NKLでの研修内容は、研修報告書をご覧ください。

 フィンランドで印象的なのは、このNKLのように、障害者であろうが、自信を持って生活している事はもちろんであるが、大統領が女性のせいなのか、多くの女性が要職をこなされていることである。こういう考え方自体が、ズレているのかもしれないが、やはり目の当たりにするとどうしても日本との比較をしてしまう。 日本の女性全体にもう少しの自信と環境が必要のような気がする。 組織部での研修を終え、これでNKLに関しては、午後からの郊外施設訪問を除き、本部での研修は全てを終了した事になる。
NKL組織部長ポルティさんに下部組織の話を聞いている写真
Portimo組織部長と感謝とお別れの挨拶を交わし、次の訪問場所HUNへ向かった。

HUNは、NKLの組織部に属する25の地方協会の一つで、ヘルシンキを含むウーデンマ地区を担当しており、NKLとは隣接するビル内にあった。
HUNでの研修内容は、研修報告書をご覧ください。

 会議室での説明や質疑応答といった一連の研修を終え、視覚障害者が製作したグッズを販売している売店を見せてもらうことになった。 刷毛やククサ、桶などの木製品、室内インテリアとしての籐製品や織物などが販売されているのだが、視覚障害者が作ったという事がブランド化されており、その見事さに感心して見入っていた。その時に、『今日来ていただいた記念に、もし買っていただければ、15%引きますよ。』と、嬉しい申し出があった。 もともと良い物があれば買おうと思っていたメンバーは、この大サービスに、チャンスとばかり本腰を入れて物色し始めた。 HUNのスタッフの写真
HUNのメンバー
 そのために昼食の予定時間を、遅らせてしまうほどであった。
昼食は、NKLの食堂に戻り、いただいた。
午後からは、すぐ近くにあるということで、盲人用図書館を訪問させてもらう事になっている。
ここはメンバーの一人も、ずっと気にしていたところであった。というのも、日本で、訪問先にピックアップしていたのだが、調査していた時に移転したらしくて、その場所の特定ができず、断念しようかとしていたところであったからだ。 初回のNKL訪問時にその話をしたら、「すぐ近くに移転していますよ。われわれの新しい活動拠点にも一緒に入る事になってもいます。よければ、次の時に話をつけておきましょうか?」という申し出をいただいていたのであった。もちろん、よろしくお願いする事でお頼みしておいたのであった。 それにしても、なんという幸運!日頃の行いの現われと推察する。
 盲人図書館はセリアという名称で、ほんとにNKLから近く、ほんの2ブロック、歩いて5分くらいの所にあった。 このセリアへの道中でも面白い試みを見せてもらった。 それは、信号機のある交差点で、歩道の信号待ちする部分の舗装方法に関するモニター試験である。
 4種類の舗装材で施工して、どれが視覚障害者にとって、一番有効なものかを調査しているそうである。歩行感や安全性はもちろんであるが、白杖で叩いた時の音が識別できるかどうかといったことも調査の項目にあるそうである。結果がでれば、教えて欲しいものである。
石の点字ブロックを体感している写真
石の点字ブロック
 セリアに入るとまず目に入ってきたのが、開架式書架に並んだ図書である。点字にでもなっているのかと思い、手に取ってみたが、ごく普通のものである。「あれっ?」と、一瞬思った。
 後で聞いて見ると、ベストセラー本など、すぐに音声化等が間に合わず、そのままでも読みたい弱視者向けに必要とのことであった。 Timoさんが責任者の方を呼んでくださっているようだ。しばらくしてここの館長であるMarketta Ryomaさんが出迎えてくれた。
セリアでの研修内容は、研修報告書をご覧ください。
セリアの蔵書の写真 通路がゆったり取ってある
セリアの蔵書
音声図書やその配達システム、そして子供たちへの立体絵本(日本からの贈書もあった)や立体教材等、セリアの充実した設備と施策には感心するしかなかった。今後ITを利用した電子配信も計画されており、益々の利便性向上に期待がかかるところである。

 この後は、NKLの郊外施設、ヘルシンキから30kmほど北にあるそうだが、『ONNELA』(幸福という意味)に案内してもらうことになっている。 車で行くわけだが、これもNKLの手配によるタクシーで行くことになっていた。車で約40分かかるが、Timoさんの話しによると、ヘルシンキからこの施設まで、視覚障害者の仲間でハイキング(もちろん歩いて!)する事もあるんですよ、とのことである。30kmというと、10時間くらいかかる事になるが、屈託なく笑うTimoさんの顔を拝見すると、きっと楽しい集いなんだと我々に思わせるに充分であった。
セリアのロゴポスターの写真
セリアのポスター
 車で10分も走ると、街という喧騒感はなくなり、あの森と湖のフィンランドの景色が戻ってきた。20分ほど高速道路を走って普通道へ下り、しばらくして自然に囲まれた施設に到着した。到着後、会議室での研修が始まったが、やはりコーヒータイムからのスタートであった。
(NKL【ONNELA】での研修内容は、研修報告書をご覧ください。)研修の後、見学となったが、敷地が広大で、各種施設が点在している。歩くだけでもいい運動になるようだ。
大きな湖にも面しており、サウナ後の水浴はもちろん、カヌーなどの湖上スポーツ用品なども備えてあり、至れり尽くせりという感じがした。
オンネラーの施設前の風景写真
オンネラーの施設前
 ヘルシンキという大都会から僅かの距離で、こんな羨ましい施設があるのである。 体育館も広いし、日本だと各種スポーツ団体なんかが合宿などで奪い合いをしてしまいそうであるが、フィンランドでは多分このような施設を、色々な団体が持っていて、そのために利用率の減少ということになってくるのではないだろうかと推察した。
ONNNELAの施設写真は研修報告書をご覧ください。
オンネラーの看板の写真
オンネラー看板
 ヘルシンキへの帰途も、NKL手配によるタクシー利用であった。しかも、我々の投宿するホテルまで送っていただいた。 Timoさんとは二日間に渡り本当にお世話をいただいた。我々ともすっかり打ち解けていただき、お別れに際し、『また、お逢いしましょう。』という言葉が、自然に出てきた。
 さて、予定されていた研修は全て終了した。メンバーからは、その成果に対し十分、いや十二分に満足した様子が伺えた。 しかし、我々はあくまで貪欲である。 今までは、視覚障害者側の意見を中心に研修を重ねてきたのだが、一般のフィンランド国民は、その施策等に対してどのように考えているのか、急遽調査する事とした。いいサンプルが身近にいたからである。 そう、我々の研修に通訳としてずっと同伴してもらったから、研修内容に関してもよく理解しているため、聞きやすいのである。 フィンランドの一市民としてのヒルボ氏へのインタビューを行った。
(ヒルボ氏のインタビュー内容は、研修報告書をご覧ください。)
 一市民とはいえ、ヒルボ氏は日本大使館の一等書記官を歴任されている方であり、そのような人も、NKLのような団体が、自分たちの権利獲得の為に様々な活動をしている事は知らなかったと言っていた事が印象的であった。
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