アルラ研究所までの道すがら

 9月24日(水)となった。
隣のビルの壁しか見えない部屋からも、明るい日差しを感じ取れ、今日の天候の良さがわかった。今日の予定はヘルシンキ市の西隣、エスポー市にあるアルラ研究所に行くことである。昨日のヒルボ氏の話では、鉄道で行くつもりのようだ。
 集合は、昨日と同じ8時頃であるから、昨日と同様に身支度を整え、食堂へ降りて行った。朝食の内容は、予想通り昨日と一緒である。 定例のブレックファストミーティングで、今日の研修予定と役割分担の再確認をし、研修終了後は、例によって自由行動ということにしたが、今夜は、夕食を全員レストランで取ることにしていたので、現地に集合ということにした。そのレストランは、昨日、ヒルボ氏にお願いして教えてもらったフィンランド料理店で、既に予約を入れてある。なかなか繁盛している店らしく、予約を取れたのがなんと夜の9時。
24日の朝食の写真
 それだけに楽しみではあるが、それまでの繋ぎ(夕方に腹減るだろうなぁ)が問題になるかもしれない。8時過ぎにフロント前でヒルボ氏と合流し、駅の切符売り場に向かった。外はまさにフィンランド晴れ。青い空がどこまでも広がり、清々しくも朝方のためかちょっと冷ための風、眩しい日差しと、ホントにいい天気だ。
 もはや勝手知ったるヘルシンキ駅。何の問題もなく切符売り場に直行した。構内は相変わらずの薄暗さだが、人々がせわしく動いており、朝の通勤風景らしくていい。エスポー方面行きの列車時刻をヒルボ氏が調べてくれ、例の有効時間入り切符を7人分購入した。ヒルボ氏は不要という事だ。 どうも、市内どの公共交通機関でも一律有効なパスを持っているようだ。 ホームは、何とホテルから一番近くで、ほぼ真横に当たる。だから南北方向に結構歩いて戻ったことになる。 駅前にある郵便博物館の写真
駅前にある郵便博物館
 列車は既にホームに止まっており、我々が乗り込むのを待ってくれている。降車駅はエスポーかと思ったら、違っていて、だいぶん手前のLeppavaara(レッパバーラ)駅(Aラインの終点)である。列車の先頭部にも“A”とラインを表すサインが表示され、わかりやすくなっている。
 この路線図にも二つの名前が入っているので、ヒルボ氏に聞いてみた。
 「ヒルボさん、あの路線図で、例えばヘルシンキが2つの書き方してあるのはなぜですか?」 「あぁ、フィンランドは公用語が二つあります。Helsinkiは、フィンランド語で、Helsingforsはスウェーデン語です。」「な~るほど!」あっけなく、問題の一つは解決した。

キップ売り場
本日移動の電車の写真
今日の移動の電車
電車内にある停車駅表示版の写真
電車内の停車駅表示版
 この列車にも、ちょっとタイプは違うが、例のカード感知機が設置してある。切符を購入していないヒルボ氏は、パスを取り出し、チェックした。近郊通勤通学列車にも、トラム感覚で設置されているのであろう。この何気ない便利さが、フィンランドのIT技術の先進性を示しているようだ。車内は日本では考えられないようにゆったりと座っていける。
 日本のように制服姿の高校生の姿はもちろん見あたらないが、学生らしい人の姿もほとんど見ない。
IC自動キップ販売機
IC自動キップ販売機
電車の中写真 すいています
電車内のようす
 時間帯が違うのか、方向が違うのか、まだ休みなのかわからないが、学生たちはどうしているんだろう。ヒルボ氏といろいろ雑談を交わしていたが、昨晩のビール購入事件の顛末も話題に上った。「そうなんです。フィンランドは夜間のアルコール販売が限定されているのです。」
 耳聡いお酒大好き人間が、この言い回しにすぐに反応した。「限定ってことは、どこかでは売っているってことですか?」「そうです。何軒かのお酒だけ扱っている店があって、そこは遅くまで開いています。」
 もちろん、ホテルから一番近い酒店を詳しく聞きだしたのは言うまでもない。結構ホテルから近いビルにあり、これで今晩から一つの問題点が解消されたことになる。メデタシ、メデタシ。 この辺りの車窓は、ラハティから来たときとは趣を異にしていて、いろいろな建物が立ち並んでいる。さすがに首都圏ベルト地帯(?)である。
 20分ほどの所要時間でアルラ研究所の最寄駅であるラッパバーラ駅に到着した。ドアが開き、ホームに降りと、日本では味わえない光景に出くわした。ホームに隣接して、普通の道路が走っているのである。改札がないとはいえ、大胆な造りに思えるが、車椅子などの利用者には、直接車で乗りつけて列車に乗り込むことができ、ものすごく便利なことだと容易に想像がついた。駅は新しく、ホームの数も思ったより多い。この辺りが研究学園都市として近年整備されだしている事をうかがわせた。
空は、雲一つなく晴れ渡っている。
ラッパバーラ駅ノプラットホームの写真
ラッパバーラ駅ノプラットホーム
駅前の写真
駅前のようす
 『天気もいいし、こんな日は研修なんかじゃなく、この近くにあるヌークシオ国立公園にでも行って、フィンランドの大自然を歩き回って見たいなぁ。』という悪魔の囁きをグッと心の中に押さえ込み、ホームから降りた。アルラ研究所は、今降りたホームからは線路を横切った、いうならば駅裏にあるそうで、ヒルボ氏の案内のまま、連絡地下道を渡り、ついて行った。我々の案内役ヒルボ氏は、始めのうちは勇躍と歩いていたが、そのうち歩き方に迷いが生じてきたように思えた。そしてついに今来た道を、戻りだした。
石畳の上を徒歩でアルラへ向かう西田、野田
徒歩でアルラへ向かう
 この上天気の空が、一瞬俄かに掻き曇り、今にも雷でも鳴りそうな模様になる、心はそんな感じである。そんな我々の表情は、見るのもいやなのか、ヒルボ氏は地図を見たり、電話したり、一人孤軍奮闘している。そりゃまぁ、右も左もわからぬ我々、流浪の旅人に助けを求めても、無駄だが・・・・。
 でも、根が『何とかなるさ!』の我々は、明るく振舞っているせいか、彼の心の支えくらいにはなっているようで、彼も時々笑みを見せながら、この流浪の旅を楽しみだした様である。しばらくウロウロしていたが、急にヒルボ氏に自信が戻ってきた。。
 そして、しっかりとした足取りで歩き始めた。それと同時に我々の楽しい流浪の旅が終わり、ちょっぴりの不安も薄らいで行ったきっと彼は、この辺りの雰囲気を我々に身体で感じて欲しかったのだろう。お陰様で、駅周辺の様子がよくわかりましたよ~~。
迷い込んだ街中の写真
迷い込んだ街中
子供を乳母車にのせ散歩している住民の写真
街中を歩く住人
 線路沿いにヘルシンキ方向へ戻るようにして、歩を進めた。途中、自動車道の下をくぐったが、橋脚部分は例によって岩盤がむき出しとなっている。道端は草木が生茂り、遊歩道のような感じである。ときどき自転車も行き交うが、日本のようなママチャリタイプは無く、レースにでも出そうなタイプばかりだ。さすがにヨーロッパはどこへ行っても自転車好きが多いところだと再確認した。
歩道の横には緑がいっぱいな写真
自然が一杯の道端
高架橋、岩盤がむき出しになっている写真
高架橋の下には岩盤がむき出し
 数分ほど景色を楽しみながら歩いていたが、鬱蒼とした森を切り拓いて造ったような道路が結構な坂となって現れ、その先のちょっと小高くなったところにいくつかの建物群となにかの案内看板らしいものが見えた。歩いて近づいていくと、看板の文字も段々大きく見えてくる。
目のいい人は、看板の文字が判別できた時点で「ARLAって書いてあるよ!」と、喜々として叫んだ。その声に合わせるかのようにメンバー全員に安堵感が生まれた。
ヒルボ氏は、“当たり前ですよ”という感じでいるように見えるが、内心はホッとしているんだろうなぁ。

アルラへの入り口の風景
アルラへの入り口
アルラへの導く看板の写真
アルラへの案内看板
構内施設配置看板の写真
構内施設配置看板
 看板には間違いなく『ARLAINSTITUUTTI』と書いてある。
ここまで来ると、景色が少し変わり、今までは多かった木々でできていた日陰が少なくなり、太陽光が燦燦と降り注ぐ広々とした空間と本館らしき建物が目に入ってきた。
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