バークシュのホテルタッルッカ

 このホテルに到着する5〜6km手前にドライブインらしきお店が1店あったが、それ以後は何もなく、突然ホテルが現れたように感じた。ホテルは少し小高いところにあり、玄関前からは大きな湖が横たわっているのが見える。 このホテルのロケーションはすばらしい。後でわかったが、客室のバルコニーからも森と湖がはるか彼方まで見渡せた。 ここら辺りはクルーザー(!)店が隣に、数百m離れてガソリンスタンドがあるだけで、後は大自然があるだけである。 そのためか、ホテルは田舎の街のビジネスホテルという感じではなく、スキー場なんかでみられる長期滞在用のリゾート型ホテルにちがいない。 タクシーの精算を済ませ、ホテル内に入りフロントへ向かった。 フロントの右手にはカフェとレストランがあり、左手には土産物店がある。
区画の扉の写真
区画扉 これをいくつ過ぎたことやら
 食事後に部屋で飲みたいワインやビールは、ホテルに頼まなければならず、そうなると高い物につくことを覚悟しなければいけなさそうだ。フロントでも、「Paivaa!」を連発し、フロント嬢の親しげな表情のもと、宿泊カードを書いた。ここで、気がついた。我々と同じころに到着したお客さんは、なぜか筋肉質の人が多いのである。これがフィンランド人の特徴なのだろうか?と思えた。
 部屋は各自シングルルームとなっており、それぞれのルームキーを貰って部屋へ進んだ。部屋番号は285、286、294、295、296,298,299で、2階のようだ。フロント横の階段から2階へ行き、矢印で示してある部屋番号方向に廊下を歩いていった。30mほど先に、防火用だろうか、扉がある。番号はまだ近いものではない。
 扉を開けさらに行く。同じように30mほど先に扉が見えた。そろそろかと思ったが、いつのまにかその扉も通過し、日本の温泉のように卓球台の置いてあるコーナーに出た。その空間を入っていくと、また扉があり、廊下が続いていた。しかし!無茶苦茶に廊下が長い。
 さらに行くこと扉1枚。ようやく部屋番号が近くなってきた。ほとんど廊下の突き当たりなのだろう、最後の扉(多分?)が見えたころ、ようやく、「あった!」と言う声が、メンバーから聞こえてきた。ほとんどのメンバーはそのブロックで部屋を見つけることができた。しかし、何故か一人だけ、その最終扉の向こうに行かねばならなかった。
「何で俺だけ?」
そんな言葉が、虚しく響いていたが、扉の閉まる音と共に消え去った。部屋で荷物を解き、簡単に着替えなどを済ませた後、児島先生が来られるという事とインターネット環境の確認や夕食も食べなきゃいけないので、もう一度受付の近くで集合という事になっていた。部屋は、ツインのシングルユースとなっていた。これも児島先生のお陰のようである。 しかし、ツインの部屋に一人というのも少しさびしい気がしないでもない。 残念ながら、部屋にインターネット環境は無かった。
部屋の写真
部屋の写真
部屋のベランダからの風景 森と湖の写真
部屋のベランダからの風景
 部屋にはベランダも付いている。二重ドアを開け、少しひんやりとした空気を感じながら、外へ出て見た。
「わぁお〜!」
 果てしなく続く森と湖が、そこに広がっていた。ほんのしばらくではあるが、ゆったりとした気分になれた。時差ボケの回復にはもってこいだ。 持ってきた携帯電話がつかえない!という事件もあったが、個人的に解決してもらうことにした。(チョット冷たいが仕方ない。) 家族や県関係者、そしてヘルシンキで通訳をしてもらうヒルボさんなどに連絡をつけ、そろそろフロントに行こうと廊下に出た。
 他のメンバーと廊下で顔をあわせたが、話題はこの長い廊下の事に当然及んだ。
「全部の部屋が詰まっているとは思えないけど、なんでこんな遠い部屋になったんかね?」
「隔離されたんかね?」などと話していたが、これにも深〜い理由が隠されていたことに気づいたのは、二時間ほどしてからであった。
 フロントでは、もう先着しているメンバーが受付譲とインターネット環境について交渉していた。ここでも児島先生の威光が働いているのか、みやげ物の売店コーナーにあるパソコンを自由に使っていいという返事を得た。詳しくはフィンランドのIT事情で述べるが、置いてあるパソコンは、日本では古めかしい部類に入ると思われたが、やはり使われているOSは何と、Windows95であった。
 しかし、無いよりましということで、すぐにNATの誇る設定班によって自分達のパソコンが使えるような環境にしてしまった。
ホテルでインターネットメールをチェックしている写真
メールをしているところ
 そして各人、早速メールチェックなどしている。根っからのネット人種なのだろう。そう考えると、フィンランドと日本、時差こそあれリアルタイムですぐそこにあるのである。改めて地球が狭く感じられ、ネットのありがたさが感じられた。そうこうしていると、児島先生がホテルに到着され、全員で挨拶した。いろいろとご手配いただいたことや明日明後日の予定の確認をさせてもらった。

郊外のスーパ
 ついでにこの近くにスーパーかコンビニでもないかと伺うと、2kmほど離れたところにあると情報をいただいた。じゃぁ、後でそこに行こうという話になったが、6時には閉まるとのことだ。あと20分も無い。そのとき先生が、
「今から帰るからそこまで送って上げるよ。」と言ってくださった。
 それではと、早速買出し班を編成し、出かけることにした。車で3、4分の所に、話の通り結構大きなショッピング街があった。しかし、しかし、駐車場に車はほとんど無く、店も全店閉まっていた。「おかしいなぁ、先週は土曜日でもやっていたのに。
 どうも先週までは、夏季営業期間で開いていたらしい。 ま、閉まっているものは仕方が無い。ホテルまで先生に送り返してもらったことがせめてもの救いだった。
 時間は午後7時過ぎ。外はまだ明るいが、さぁ、夕食だ。日本ではもう真夜中の1時過ぎだ。まぁ、本当は夜食といった感じなのだが、郷に入れば郷に従えで、うまいフィンランドの夕食とワイン、ビールをいただこう。場所はホテルのレストラン。フロントの右側の奥がスペースだ。
一番奥の窓際で、絶好のロケーションを楽しめことのできる場所を確保した。といっても時間がまだ早いのか、宿泊客がいないのか、我々だけであるが。ウェイトレスが、早速メニューを持ってきてくれた。
 もちろん、コミュニケーションは忘れない。
「Iltaa!(こんばんは)」、
部屋から見える森と湖の写真
どの部屋からも森と湖が見える
「Olen Japanilainen.(私は日本人です。)」
などの挨拶から、「Saanko punaviini、ykusi.(赤ワイン1本ください)」といった注文まで、知っているフィンランド語を総動員して話しかけた。 ウェイトレスは始め、うれしそうに挨拶してくれたが、あとは笑っているしかないようだった。ま、えらく人なつっこい変な日本人の団体とでも思ったかな? とにもかくにも、そのメニューの中から、定食と思われるセットを7人分、それにワインやビールなどを注文した。

メニューの内容をメモメモ
 この定食、ズラーッと料理名が書いてある(ように見えた)。普通、ヨーロッパは前菜と主皿がつくし、あとはデザートかなんか書いてあるんじゃないの?という妙にそれらしい意見にとりあえず同調した。料理の来る間も、好奇心の塊である我々は、客のいない事をいい事にレストランのアチコチを観察していた。
 テーブルや椅子、インテリアなどの雰囲気はやっぱり北欧風だ。窓は二重だが、木のサッシのためか、日本より貧弱そうだが温かみがあるようだ。 そんなことをしているうちに、まずワインなどの飲み物が運ばれてきたので、別テーブルに用意してあるパンやサラダなどをめいめい取ってきて席についた。 なにはなくとも、無事フィンランドに到着したことと、明日からの各種の研修や勉強会がうまくいきますようにということで、これまた覚えたてのフィンランド語で、「Kippis!(乾杯)」を唱和した。
 
 飛行機の中でたっぷりと飲んでは来たが、やっぱり地に足を付けて飲むワインはうまい。 このロケーションや雰囲気がまた、たまらなくなるくらいいい味を醸し出してくれるのである。杯を重ねているうちに、食事が運ばれてきた。 しかしそれは、当初の我々の意に反して、いきなり大皿に肉や野菜、ポテトがド〜〜ンというものであった。どう見ても次から次と皿が運ばれてくるものではないようだ。ではあのメニューは何だったのだろうか?
 わからんときは聞けばいいとばかりに、ウェイトレスに聞いてみることにした。「料理はこれで全部ですか?」
「そうですよ。パンなどは向こうに置いてありますので、好きなだけ食べてください。」
「では、このメニューにズラーッと書いてあるこれらの言葉はなんですか?」
「これは、パン、豚肉ステーキ、ポテト、にんじん・・・と書いてあるんですよ。」
「あ〜、そうなんですか。ありがとう。」
何のことは無い。料理ではなく、食材が並べられていたのである。
「ハハハ・・・」笑うしかなかった。 食べて、飲み、喋り、笑って、フィンランドの初日の夕食を存分に楽しんでいた。 しかし、時々ドーンという音が、何処からか聞こえてくるようになった。
フィンランド最初の夕食 乾杯している写真
フィンランド最初の夕食 乾杯!
メインディッシュの写真
メインディッシュ
夕日に染まる湖畔の写真
夕暮れの湖畔
 5分か10分に1回程度だが、確かにレストラン入り口辺りの天井から聞こえてきた。 初めはそんなに気にならなかったが、気になりだすとダメだ。まさか工事でもあるまいと考えていたが、ウェイトレスに聞いてみた。すると、「実は今から夜にかけて、ウェイトリフティングの競技会があるんです。その音なんです。すいません。」という答えが返ってきた。 持ち上げたバーベルを床に落とすときの音だったのである。 なるほどそれで、また得心がいった。 そう、このホテルに到着したとき玄関にいたイカツイ人たちは、その選手だったのだ。妙に筋肉質だったことも、これで納得できた。そしてもう一つ。
 この大会があるので、我々の部屋に変な騒音が届き、安眠を妨害することの無いようにとの配慮で、あんな隔離されたような端の所に部屋を取ったのだそうだ。

 食事も楽しく済ませることができた。我々が、終えるころには何組かのお客さんが食事をしていた。大声で笑ったり、彼らからすると変な言語で話していて(日本でも変かな?)、結構迷惑だったかもしれない。反省。 今日はこれでグループ行動としては解散。あとは各々部屋に戻り、明日の朝を待つこととした。部屋に戻ったころ、西の空にようやく夕日が大地に沈み始めていっているのがベランダの向こうに見えた。 茜色に染まった大自然、すばらしい風景だ。時間は午後8時半であった。

 ところで、明日の朝食はどうなっているんだろう? みんなで?てんでんに? 何も決めなかったなぁ。まぁいいか!でも朝食は込みの料金なのかな? そんな心配をしながら、長かった1日の疲れを癒すことにした。
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